今回は大学院修士課程2年の青木杏奈さんの研究にスポットを当ててみました。
―どんな研究をしていますか?
水上オートバイの操縦や取扱いの安全性について研究しています。
私自身も登録小型船舶教習所で水上オートバイの操縦免許の教官として働いていて、日々耳にする事故の多さに胸を痛めています。
そこで、少しでも事故を減らすために何ができるかを考え、研究のテーマに選びました。もちろん事故が起きないのが一番ですが、万が一事故が起きてしまったときに適切に対処できるかどうかは、その人の体格や体力の違いに関係するのではないかという点に着目しています。
―なぜ体力に関する研究なのに体力測定ではなくアンケートなのでしょうか?
そもそも水上オートバイについての研究は少なく、もし安全性についての仮説を立てたとしても私だけしか考えつかない内容ではダメなんです。
同じ教官である全国の教習所の皆さんに意見を聞いて、「私もそう思う」「やっぱりここが大事なんじゃないか」と皆さんが納得できるものだと確認できて初めて、実際の測定に進めると考えています。そのためにデルファイ法というアンケート手法を選びました。

―そもそもデルファイ法って何ですか?
あるテーマについてその分野の専門家の皆さんに繰り返しアンケート調査を行い、一つの意見にまとめていく手法です。匿名なので意見が言いやすく、立場などに左右されずに誰でも平等に評価することができます。
だから教官のみなさんのご協力がとっても大切なんです!
―なぜアンケート調査を何回も繰り返す必要があるのですか?
1回だけだと、周りの意見を聞いて認識が変わったり、もともと意図していたものと違ったりしたときに修正できない可能性があるんですよね。
毎回結果を全員にフィードバックし、他の人の意見を聞くことで、「そっちの方がいい!」「そういう意見もあるのか」と認識が変わることもあるので、教官の皆さんには繰り返しアンケートに答えていただくことで、これだ!と思う意見を正直に教えてほしいです。
―最後に、今後目指している水上オートバイの未来について教えてください。
とにかく痛ましい事故を少しでも減らすことです。水上オートバイは少ない日数で楽に免許がとれちゃうイメージがある方もいるかもしれませんが、一方で死亡事故も多い乗り物なんです。だからこそ教習でもそこをしっかり認識してもらいたい、楽しいけど安全には十分注意しないといけないよね、と改めて理解してもらいたいですね。そのために必要な指針の提案や教習内容の強化にこの研究がつながれば嬉しいです。